The Monkey's Paw
by W.W.Jacobs
illustrated by Kevin Jones
語数 4,830
あらすじ
冷たい雨の降る夜、White家に昔の友人Mr.Morrisが訪れました。温かい家庭に招かれた彼は、インドで兵士をしていた頃の面白い話を聞かせます。そして話の流れからポケットの中のあるものを取り出しました。それは、彼の友人がインド人からもらったという ”猿の手”でした。
この小さく汚れた猿の手を、右手で握りながらお願いをすると、願い事を3つ叶えてくれるという。けれども、この手には魔力がかけられており、願い事が叶う代償に、不幸な事が起こるというのです。
Mr.Whiteとその妻、そして一人息子のHerbertは、興味と欲望から、Mr.Morrisの忠告を聞かず、"猿の手" を譲り受け、1つ目の願いをかけてしまいます。それは、家のローンの返済金30,000£が欲しいというものでした。
翌日、White夫妻は、Herbertの勤める工場から、彼が機械に巻き込まれて亡くなったと知らされます。そして、支払われた補償金は、願い通りの30,000£…。
大事な一人息子を無残な姿で失い、嘆き悲しむ夫妻。どうしても諦めきれない妻は…。
感想
”paw” という単語から思い浮かべるのは、イヌ、ネコ、クマなどの可愛い手なので、”ミイラ化した猿の手” は不気味で想像がつきませんでした。生き物の手を無造作にポケット忍ばせておくなんて怖過ぎる。
そういう行為が理解できないし、読み始めはなかなか話に入れなかったのですが、だんだん場面が見えてくると、次が気になってぐいぐいと引き込まれていきました。
White夫妻にとってHerbertは、遅く出来た大事なかけがえのない一人息子でした。親子仲良く慎ましく、ささやかでも幸せな生活を送っていたのです。家のローン返済という、もし叶えられたら嬉しいけれど、叶えられなくても不幸になるわけではない願い事を叶えるために、二度と戻らない、代わりのない幸せを失ってしまったのです。
安易にお金を手に入れようとした、というよりは、本当に叶えられるのか試してみようというくらいの軽い気持ちだったように感じました。その代償がこんなことになるなんて。
終盤、ドアの向こう側の音は何だったのでしょうか。
妻の気持ちも、夫が妻を想う気持ちもわかる気がします。
お読みいただき、ありがとうございました。